子供にとって絵や音楽、いわゆる芸術というものに接することはとても大切なことだと思います

今回の対談の森勝彦さんは市内石橋に在住の画家です。現在は中学校の教諭をされていらっしゃいます。奥様も同じ美術大学を卒業され、絵画教室を運営されています。

森田 
森さんとは始めたお会いします。いつか芸術家の方とお話しする機会があれば聞いてみたかったことがあります。先程森さんの経歴を少し見せていただきました。画家としても彫刻家としても日本を代表する作家、岡本太郎さんの作品造りのスタッフをされていたようですね。

森  
岡本太郎先生の作品の制作スタッフとしては10年以上携わってきました。樹脂を使った巨大なモニュメントから小品まで色々なものを制作しました。私は絵画専門で、彫刻やオブジェとはあまり関係がなかったのですが、岡本先生とのかかわりによって、とても広い視野で芸術というものを捉えることが出来るようになりました。人間的にもとても繊細で魅力のある素晴らしい人でした。

森田 
ところで、東京のような都会に住んでいれば、興味を持ちさえすれば美術展などに行き、ヨーロッパの有名な画家の絵を鑑賞する機会などがいくらでもありますが、地方都市の場合は、美術館などの施設がないためか、なかなかそのようなチャンスがありません。森さんは教育者でもありますから、子供の教育という観点から見てこのような現状をどう思われますか。

  
子供にとって絵や音楽などの、いわゆる芸術というものに接することはとても大切なことだと思います。最近教育の現場で情緒教育などということを盛んに言いますが、それに反して学校での美術や音楽の授業が減っていることはとても残念だと思います。
 少し話がそれるかもしれませんが、以前勤務していた中学校で、卒業生記念にモニュメントを造ろうということになりました。そこで色々な生徒に声をかけたのですが、一番がんばってくれたのは、学校ではあまり評判のよくない、教師たちが少し手を焼いている生徒でした。創作の場を与えられた彼らは、驚くほどの創造性と協調性を持って作品造りに参加してくれました。私はそこでものを造ることの素晴らしさを再度教えられました。

 話は戻りますが、有名であるとか高価であるとかいう価値基準でなく、いわゆる“本物”と呼べる芸術に出会えるような場所が私たちの住む街にあればと思うことがあります。そうすれば、もっと多くの人たちが創造する楽しみ、制作する楽しみを通して、人生の楽しみと出会えるのではないかと思います。

森田

確かに森さんのおっしゃるとおりだと思います。私たちの住む街に文化の基点となるような美術館のようなものがあるといいですね。

  
そんな大規模のものではなく、地域の作家の皆さんの作品を展示し、気軽に誰もが芸術に触れることの出来るような美術館が欲しいですね。また、私の家の周りはとても自然が豊かな所なので、周辺の皆さんの理解を得ることができれば、豊かな自然の中で子供も大人も一緒になって、自由な発想で何かを作り上げることの出来る場所が出来るのではないかと考えています。

森田 
森さんはどのような絵をお描きになるのでしょうか。

森  
私は絵のスタイルは、常に新鮮なものに興味を持ち、それを形にしてみることです。ですからこれが自分のスタイルというものがないのが、私のスタイルだと思います。

 私は佐賀県の出身です。佐賀といえば有田焼きが有名で、私の親戚も釜を持っています。あるヒントから陶器で額縁を造ってみたいと思いそれを親戚に依頼したのですが、特殊な形で思うように出来ず断られてしまいました。そうなるとどうしても形にしてみたいというのが私の性分で、試行錯誤を重ねて型を作り、結局自分で焼いてしまいました。その陶器の額に絵を入れることにより、額縁と絵を一体にした独自の世界を表現できたと思っています。そんな風にとにかく興味を持ったら形にしてみる、ということを積み重ね、それがいつの間にか自分のスタイルになったという感じです。

森田 
森さんのお話を聞いて、私も色々なことにこだわるのではなく、常に新鮮な目をもって興味を持つような生き方をしたいと思いました。
 ところで、森さんもご存じと思いますが、市内の市民グループが、現在使われていない公共の施設を利用して市民美術館を作ろうという運動をしています。建物は大正の終わりか昭和の初期に建てられたもので、とても頑丈なものです。古いから取り壊すのではなく、その良さを利用し、コストのかからない美術館を作るという発想に私も共感し、できることがあれば協力させていただきたいと思っています。

  
私もその話は大賛成です。美術館というととてもコストがかかるものと思われがちですが、そんなことはないと思います。有名な作家の作品は東京に行けば見ることが出来ますから、そうではなこの地域独自のものから生まれた美術館はとても魅力があると思います。次の世代のためにも是非実現させたいですね。

森田 
近く是非森さんのアトリエにお伺いして作品を見せていただきたいと思います。今日はどうもありがとうございました。

森 勝彦作 「白百合」 

絵画や音楽を鑑賞することは、人間の心の成長にとても大切なことだと思います。特に小さな子供の感性を伸ばすためには必要不可欠なことですが、あまり重要視されていないように感じます。森さんのような自由な発想を持った芸術家は市民の財産だと思います。これからは芸術や文化というものにもっと興味を持ち、自分なりに出来ることがあれば積極的に実行していきたいと思います。     

 森 田

森勝彦さんプロフィル
1955年佐賀県に生まれる。
東京造形大学美術学部絵画科卒業。
日本彫刻美術にて岡本太郎氏の作品制作スタッフ。
東京大丸美術画廊、ギャラリー友美堂(丸の内)、日動画廊(銀座)、他個展多数。
東松山市石橋在住
 
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